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第9回「留学していなければ今の自分はいない」中坊壮介(プロダクトデザイナー)[後編]

イギリスという環境

--イギリスでのワークスタイルについてお聞かせください。

N:日本とは全然違いますね。日本では普段の生活が少々犠牲になったとしても仕事を優先させるという感じですよね。でも、イギリスは日本に比べるとそうではなくて、労働者は定時が来たら上がるのが当然の風潮になっています。
朝、オフィスに行って仕事をして夕方ぐらいに帰るんですが、なんだったらオフィスにキッチンもあるので、昼に材料を買ってきてパスタ作って食べたりするんですよ。それぐらいの余裕があるんですね。実際は昼休みも始業時間も 終業時間もありません。僕は二人のイギリス人スタッフと一緒に働いていて、デザインは僕を含めてロンドンには三人います。そのうちの一人は、土曜日は昼の二時半に上がるとかしていますね。もちろんジャスパーと相談の上でそういう契約にしてるんですけど、そういう変則的な仕事の仕方も可能なんです。だから僕もいまだに定時がいつか分からないんですよ(笑)

--中坊さんがイギリスに最も魅力を感じられるのはどういうところでしょうか?

N:月並みなことになってしまうんですが、新しいものと古いものが共存しているという環境は大きいです。そういうものがデザイナーやデザイン自体にすごく関係してるんですよね。産業革命から鉄の鋳造品がイギリスでは各所にあって、それが現代のモダンなデザインにも影響していますね。新しいものと古いものの共存という文化は脈々と受け継がれていて、イギリスはどの国よりもデザインと言う分野が社会全体に繋がっていると思います。


納得できるのならば、やってみるべき

--留学を考えられている方にアドバイスをお願いします。

N:僕は留学していなければ今の自分にはなってなかったですね。 僕にとって留学は今の自分に直結しているので、自分自身の経験としてはとにかく大きな出来事です。そういう体験としては人にも勧めたいと思っています。
もちろん自分自身の行動ではあるんですが、出会いであったり、いろんな人に良くしてもらったりと偶然の積み重ねだと思うんですよ。やっぱり流れに任せるしかない部分は間違いなくあります。もしかしたら、自分の思い通りの成果が得られないかもしれない。難しいことや不毛だと思うことも覚悟しなければならない。そういうことも考えた上で、結局自分がどういう結果が出ようが納得出来るのならばやってみるべきだと思います。
留学してよかったというのは、月並みですけど、視野が広がったというか少なくともデザイナーとしての視野というものは広がりました。いろんな所から来たモチベーションの高い学生と一緒にやるわけですから、これまで自分が思っていたデザインという括りには何の意味も無くて、自分がやるかどうかは別として、いろんなことやってる人間がいるから「そうか、こんなのも良いんだな」と、それに気づけたのはやっぱり大きな経験ですね。


set arrow
「set_arrow」三角定規と普通の定規がドッキングした矢印形の定規。 2009年


small vase
「small_vase」一輪挿しの花瓶。 2009年

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中坊 壮介(なかぼう そうすけ)
1972年京都生まれ。
1998年京都市立芸術大学デザイン科卒業後、松下冷機株式会社デザインセンター勤務。
2000年渡英し、2002年Royal College of ArtのDesign Products科修了。
株式会社良品計画企画デザイン室勤務を経て現在ジャスパー・モリソンのロンドンオフィス勤務。

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