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第10回「自分のレールを敷くために」辛島デイヴィッド(作家・翻訳家・文化コーディネータ)

留学体験の活かし方

--留学が、いまのキャリアに活かされていると思いますか?

アメリカンスクールにいたから、バイリンガルなのは当たり前。でも留学することで「バイカルチュアル」になる。つまり2つの文化を身につけることができます。僕の仕事のひとつ、翻訳はまさにそれ。
日本でのバックグラウンドがなければ英訳はできないし、英米での生活経験があるから「読み手」の感触も理解できる。単に訳すだけでなく、向こうの文化になじんだ翻訳を提供することができます。
プラクティカルな面でも、留学は僕のチャンスを拡げました。
いま僕は日本財団というところで働いているのですが、この組織は日本の学部からは年数名しか募集していません。大半は留学経験のある人で、しかもマスターを持っている人のプライオリティが高い。
僕のマスターはクリエイティブ・ライティングで、日本財団に入った当初の仕事とはなんの関係もなかった。でもいまでは専門を活かせるプログラムを担当できるようになりました。

--専門を活かしたプログラムというのは?

日本の文学や文化を海外に紹介してゆく仕事です。
まず日本文学やノンフィクションを翻訳して、海外の出版社から出してゆく仕事があります。僕個人としても、山田太一さんや金原ひとみさんの作品を翻訳して出版しています。
また海外の大学とパートナーシップを組んで、若手の翻訳家を育成する事業もおこなっています。英国では12の大学に、日本に関する講師や教授のポストを作りました。その先生がたが英国の大学生や大学院生に、日本について専門的な情報を提供してゆく。私が体験したような異文化との出会いを、英国の学生にも与えることができればと思って計画したプログラムです。

--そして小説、ですね

ええ。留学前から、将来文学とか出版とかに関わりたいという気持ちがありました。でも日本の文学界って、どっちかというと閉ざされた世界‥‥とまでは言いませんが、非常に狭い。関わっている人数も少ないし、出版社も作家も狭き門ななんです。
僕は小説で食べてゆくのではなく、他にキャリアがあって小説を続けられる環境を作りたかったのです。小説だけでは食えないというのとは違って、社会とつながりながら書く、という選択肢を持ちたかったのです。実際今年3月、最初の小説となる「神村企画」を上梓しました。

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